林瞬
茨城県古河市の介護老人保健施設で入所者の男性2人が相次いで殺害された事件で、元施設職員の赤間恵美容疑者(36)が点滴中のチューブに注射筒(シリンジ)を接続して相当な量の空気を注入していた疑いがあることが捜査関係者への取材でわかった。シリンジで1回で注入できる空気量は限られるといい、専門家は短時間に複数回にわたって注入した可能性があるとみている。
県警によると、入所者の吉田節次さん(当時76)と、鈴木喜作さん(当時84)はいずれも点滴中に容体が急変して亡くなった。吉田さんは足の血管に、鈴木さんは腕の血管にチューブをつないで点滴中で、県警はいずれも赤間容疑者がチューブに、シリンジを接続して体内に致死量の空気を注入したとみている。
吉田さんの死因は司法解剖の結果、血管に空気が詰まって急激に血液の循環が悪化する空気塞栓(そくせん)症による急性循環不全だった。鈴木さんは司法解剖されていないが、救急搬送先の病院が撮ったCT画像で、体内の血管に空気がたまった状態だったことを確認しているという。
循環器医療に詳しい国際医療福祉大学の下川宏明・副大学院長によると、仮に過失で少量の空気が体内に入ったとしても、急死に至る可能性は低いという。死に至る空気の量は200cc以上は必要と推定され、一般的なシリンジでは10回分の注入に相当する量だと指摘する。2人の容体が急変している状況から、短時間に大量の空気が注入された可能性が高いとみる。
県警によると、鈴木さんが亡くなった昨年5月30日時点で、赤間容疑者は看護師として勤務していたが、鈴木さんの死後、6月中旬に看護職から介護職に配置換えになり、シリンジを扱う立場ではなくなった。だが、吉田さんが死亡した7月6日に吉田さんのそばでシリンジを操作している姿を同僚に目撃されていた。(林瞬)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル